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京都市社会教育委員のコラム 石川一郎委員 ~書く楽しさ、難しさ~

  • 社会教育委員
  • 2023年1月6日

京都市社会教育委員のコラム 石川一郎委員 ~書く楽しさ、難しさ~

「書く楽しさ、難しさ」
 京都市社会教育委員 石川一郎氏(京都新聞社滋賀本社代表・編集局長) 

職業柄、文章をうまく書くコツを尋ねられることがある。なかなか難問である。
経験的に言うと、その人ならではの体験や考え方がにじみ出ている文章は、読み手の気持ちをとらえやすい。何かのレポートなら、しっかり調べたり考えたりした跡がうかがえる記述は説得力が高い。新聞記事でも、十分な取材を尽くし「足で稼いだ」原稿は、読者の共感を得やすいと感じる。
文章は「内容が8割」とも言われる。書くという行為がコミュニケーションの手段である以上、表現の巧拙よりも、取り上げたテーマそのものが読み手に強い印象を与えるのは自然なことだ。
それでも、読みやすい文をつくる訓練法はある。これもつたない経験からではあるが、よい文章を筆写し、文体をまねる練習が効果的だ。
若い頃、新聞社の入社試験に備えて作文のにわか勉強を始めたが、書きたいことがうまく言い表せず、支離滅裂な文章にすっかり自己嫌悪に陥ってしまったことがあった。
そんな折、人に勧められて試したのが新聞コラムの筆写だった。当時購読していた全国紙の1面コラムを毎日、原稿用紙に書き写す。最初は文字を並べるだけだったが、そのうちに、コラム筆者の息づかい、文を構成するリズムが体に染みてくるようになった。
後に論説委員の仕事をするようになって、新聞コラムは内容の当否だけでなく、あいまいな言い回しや言葉の重複などの「無駄」を極力そぎ落として作り上げていることを知った。若き日の筆写訓練は、けっこう良い素材を使っていたことになる。
書いた文章を第三者に読んでもらうことも重要だ。自分ではうまく書けたつもりでいても、意味が通らなかったり、考え方が独りよがりに陥っていたり、という指摘を受けることは少なくない。昨今、SNSへの投稿がよく「炎上」するのも同じ構造なのだろう。
新聞社にはデスクと呼ばれる原稿のチェック役がいる。自分とは異なる目線で助言してくれる「友」を持つことは、よい文章を書くために重要かもしれない。

<石川 一郎 氏 プロフィール>
1990年、京都新聞社入社。京都本社編集局、東京支社、北部総局(福知山市)、論説委員室などを経て2022年4月より4度目の滋賀本社勤務。調べ物などで京都市や滋賀県の図書館によく足を運んでいる。

★コラムが掲載されている「京(みやこ)まなびぃニュースレター第33号」はこちら
https://www.city.kyoto.lg.jp/kyoiku/page/0000306012.html

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