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社会教育委員 2019年2月27日 ニュースレター

京都市社会教育委員のコラム「まなびぃのつぼ」 柾木 良子 委員 ~前を向くと景色が変わる~

「前を向くと景色が変わる」

京都市社会教育委員会議 柾木 良子 委員
(同志社大学日本語・日本文化教育センター嘱託講師)

 京都は着物のまちといわれますが,着物産業も着る人も減少の一途です。私は学生時代に染織を専攻していたことや,女優やモデルという仕事柄,着物を着る機会が多くプライベートでも好んで着ていました。そして多くの人が潜在的に着物に憧れを抱くにも関わらず,着るまでに至らないことに疑問を感じていました。この京都で子どもの頃から,ひらがなやカタカナ,足し算引き算を習うように,学校で着物に親しめるようにしたい。着物を着なくてもいいけれど,良し悪しも知らないまま大人になってしまうのは惜しい。そう思ったことが現在の仕事の始まりでした。
 若い世代が着物に慣れ親しむ授業をつくりたい。その一心でまずは浴衣授業を提案し,小学校や高校の家庭科で取り入れてもらうようになりました。女子少年院でも実施するなど,ひと夏で200人ほどを指導する機会に恵まれました。
 ただ,最初の数年は浴衣も経費も持ち出しです。高校生100人が浴衣を着られるようになっても,授業の運営経費は全て自前…。それでも,着物の魅力を伝えたいとの思いに突き動かされるようにして続けてきました。
 その原動力になったのは子どもたちや学生たちの反響です。「日本人ってすごいな」「浴衣を着たら姿勢がよくなるし,言葉使いまでよくなった気がする」「所作が丁寧になって,物を大事にしようと思える」「大人になったら着物を着たい」「こんな素敵な着物を残さないなんてもったいない」。その前向きさ,好意的な反応にこちらが驚いたほどです。毎年こうした感想が返ってくるので,何事にも代えがたいやりがいを感じ,続けて行かなければという使命感のようなものが生まれてきました。
 着物や浴衣は若い人たちにとって,ただ衣服というだけでなく精神的にも文化的にも興味深いテーマになっていることに気付きました。彼らには新しいファッションとして映っているのです。また留学生にも,着物は日本文化の象徴の一つとして注目されていると感じます。
 「着物を学校教育に」との思いは徐々に受け入れられ,大学の授業にも取り入れられるようになり,高校の授業も今年で15年目を迎えました。教えることで私自身も多くのことを学びました。
 直感を大切に,情熱だけは人一倍。何度も壁にぶつかって,自信を失うこともありますが,全ての経験に無駄はないと実感しています。前向きな気持ちは大きな力になると信じて!

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【柾木 良子 委員 プロフィール】

 京都市生まれ。京都市立銅駝美術工芸高校・京都芸術短大染色科卒業。卒業後は女優としてNHK大河ドラマ,TV,CMに多数出演。雑誌「美しいキモノ」モデルの経験を生かし着物教室を開催。各地で講座やイベントに出演しながら若い世代に着物を伝えるため精力的に活動中。平成29年7月から京都市社会教育委員。