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京都市社会教育委員のコラム「まなびぃのつぼ」 齊藤 修 議長 ~情報の大海原を生きる~
「情報の大海原を生きる」
京都市社会教育委員会議 齊藤 修 議長
(京都新聞社総合アドバイザー)
わたしたちはメディアの情報をもとに,自分が今,どのような世界に暮らしているかを知り,いかに行動すべきかを判断しています。少しおおげさですが,日々の情報から常に,自分なりの世界観をつくっているのです。
これまで,おもに情報を提供してきたのは新聞,テレビなどマスメディアでした。今は,それがインターネット,ソーシャルメディアなど新しいメディアへ代わりつつあります。
新しいメディアは,だれもが手軽に受発信できることから,情報量が爆発的にふくれあがっています。それにともない真偽不明の情報が急増し,まさに,玉石混交の「情報の大海原」となっています。虚偽の情報では世界観がゆがんでしまいます。しかし,この「情報の大海原」から信頼できる情報を選り出すのはなかなか困難です。
それなら,これまでどおり,情報の裏づけを取るなど「真実の追求」を信条とするマスメディア情報に頼ればいいようなものですが,これとて「誤報」と全く無縁というわけではありません。
また,マスメディアがいうところの「真実」も,記者が自分の視点で「現実」を切り取った情報ですから,別の記者なら,「真実」はまた違ってくるかもしれない。それに,報じられた情報のかげに,報じられない大切な情報がかくされていることだってありうるのです。
なんともやっかいな,しかし,暮らしに欠かせないこの「情報の大海原」を,では,いかに渡っていけばいいのでしょうか。
オバマ米大統領の時代に報道官を務めたJ・アーネストさんの情報の扱い方が参考になります。報道官は,世界からホワイトハウスに集まる記者の厳しい質問に答えねばなりません。彼の一言が世界を揺るがすかもしれない。そこでは情報が命なのです。
彼は,朝一番に<ネット>で「最新の情報」を集める。次に<新聞>ウォールストリートジャーナル,ニューヨークタイムズ,ワシントンポストの1面記事の扱いに目を通し各紙の「価値判断」を確認する。さらに<直接>に各分野の政府高官からメディアにはない「生の」情報と意見を聴く。そのうえで情報を整理し,自分なりの世界観をつくりあげて記者会見に臨む,というのです。
要は①情報を鵜呑みにせず②複数の情報源によって情報の精度と価値判断をたしかめ③他人の情報や意見に耳を傾け④自らの頭で整理する。まさに,最近注目の「メディアリテラシー」の極意といえそうです。
<委員からのメッセージ>
白か,黒か。敵か,味方か。右か左か・・・コトの本質を横に置いて,ひたすら極論をぶつけあう。そんな二項対立の議論が幅を利かせています。しかし,ひとつの「出来事」でも,立場の違いによって,異なる「真実」が出てきます。白と黒の間に広がる灰色グラデーションは無限に近い。異論に耳を傾ける寛容さを持ちたいと思います。
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【齊藤 修 議長 プロフィール】
京都市出身。立命館大学卒業後,京都新聞社に入社。編集局長などを経て主筆,編集本部長として言論・報道部門を統括。平成20年に京都新聞社代表取締役社長に就任,22年から同社相談役,京都新聞ホールディングス相談役,同顧問。30年から現職。また,京都のメディア関係者と市民がメディアのあり方について忌憚なく意見交換する場である「京都メディア懇話会」においても理事長として活躍中。平成17年7月から京都市社会教育委員,29年7月から議長を務める。